シナリオ

訪問看護ステーションの1日

シーン#1 訪問看護当日の出発の準備

A訪問看護センターに勤務する看護師のYさんは、自分のデスクの上に置いてあるノートPCにGoogleカレンダーを出して、今日訪問する予定の患者さんを確認した。今日は5人の患者さん宅を訪問する予定だ。次に、Googleマップを出して 、訪問予定の患者さん宅を確認した。マップをざっと見渡して、どの順番で訪問すれば効率が良いかを考えた。訪問順が決まったら、それをGoogleカレンダーに反映させた。
次に、PCでEvernoteを起動し、訪問予定の患者さんの記録を確認した。この記録は、従来は紙ベースで運用されていたもので“連絡ノート”と呼ばれていた。今Yさんが見ているEvernoteには、患者さんごとにノートブックが作成されている。そして、その中の一つ一つのノートには、医師や看護師、そして介護職のスタッフなど在宅医療チームが訪問記録や連絡事項等を記入し、互いに情報を共有している。
ひととおり訪問先の患者さんの記録をEvernoteで確認したYさんは、スマートフォンのアプリ「僕の来た道」のスタートボタンを押した。これは、毎日の行動を自動的に記録するライフログアプリで、訪れた場所や滞在時間などを自動的に記録してくれるものだ。このアプリを使えば、いちいち訪問順や訪問時刻を記録しなくても済む。一日の訪問を終え、事務所に戻ったら、1日の行動の記録をEvernoteへ転送すれば報告書もすぐに作成できる。それだけでなく、前回の訪問日や時刻もすぐにわかるので、以前のように訪問記録を探し回らなくても済む。



シーン#2 Aさん宅(パーキンソン病)

Yさんは最初の訪問先である患者のKさん宅に到着した。Kさんはパーキンソン病を患っており、日常の生活にも支障を来している。いつものようにまず体温・脈拍・呼吸速度・血圧などのバイタルを計測した。体温計や血圧計で計測したデータは、FeliCaでスマートフォンのアプリに取り込むことができる。転記する必要がないので入力間違いもない。取り込んだデータは専用アプリで時系列にグラフ表示できるので体調の変化が一目でわかる。「Kさん、バイタルは落ち着いていますよ」。スマホを器用に扱いながらYさんはKさんに声をかけた。「そうですか。安心しました。ちょっとこのところ午前中は気分が悪くなることがあったので・・・」ホッとした様子でKさんは答えた。
バイタルの計測を終えると、Yさんはポータブルのトイレの掃除を始めた。パーキンソン病は難病の一つで、動作緩慢(無動)、手足のふるえ(安静時振戦)、筋肉のこわばり(筋固縮)などの症状がでるため、Kさんはポータブルトイレを利用している。トイレの掃除が終わると入浴だ。Kさんは週に2度の入浴をとても楽しみにしている。入浴後、KさんはYさんに爪を切ってもらいその日の訪問看護は終わる。気になることや申し送り事項をEvernoteに記入し、約1時間半の訪問を終えてKさんのお宅を後にする。

シーン#3 Bさん宅(骨折による寝たきり、褥瘡あり)

車に乗り込んだYさんはGoogleマップで次の訪問先であるBさんのお宅を確認した。Googleマップには既にBさんのお宅にマーカが立っている。「ここからBさんのお宅に向かうにはこのルートが最短で、距離は約10km、だいたい20分くらいで行けるわ」。経路を確認したのち、スマホをナビ替わりにダッシュボード上の専用ケースに立てかけ、車のエンジンをかけた。約20分後、Bさん宅に到着したYさんはBさんが寝ている部屋に入った。
Bさんは、3か月前に足を骨折して以来、体力の低下も加わって寝たきり状態になっている。そのため仙骨部に褥瘡がある。
Yさんは、スマホで褥瘡部分を撮影し、Evernoteの患者ノートへ取り込んだ。さらに、スマホの音声入力機能を利用して患部を口述記録し、これも画像と共にEvernoteに記録した。その後、Bさんの褥瘡の状態をノートに記録したことを、LINEを通じて在宅ケアチームに伝達した。Bさんを担当する医師は、後日、このノートを見て治療方針を決定し、看護師などへの指示をノートに記載することになるだろう。また、褥瘡予防には、皮膚面の保湿と保清(清潔)が重要で、これには栄養管理が主体となる。そのため、最近では管理栄養士の役割が重要となってきている。他にも、薬剤師やリハビリテーション療法士が褥瘡の予防に一役買っている。このように多職種間で情報を共有してBさんのケアにあたっている。その際、スマホを使った情報共有はなくてはならないものになりつつある。
褥瘡部の記録を終えたYさんは、患部を処置し、その他のバイタルを計測してEvernoteへ記録した。帰り際に、明日来る予定になっているホームヘルパー(訪問介護士)に患部を除・減圧するためのエアマットを買ってくるようLINEで依頼した。さらに、次回の訪問日はBさん宅の事情で都合が悪いということだったので、訪問看護の予定を変更することにした。YさんはGoogleカレンダーを使って空いている日を調べ、その日にBさん宅への訪問予定を入力した。このGoogleカレンダーは在宅医療チームに共有されているので、この予定変更はチームのメンバ全員に伝わる。しかし、念のためにLINEでこのことを伝えておくことにした。

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